清くて正しい社内恋愛のすすめ
「まさか本店の中庭をプラネタリウムにしようだなんて……。そんな事、いつ思いついたの?」

 エレベーターを降りると、穂乃莉は加賀見を振り返る。

「まぁ具体的に思いついたのは、昨夜、穂乃莉の寝顔を見ている時だけど」

 加賀見がにんまりと口元で弧を描き、穂乃莉は途端に恥ずかしさがこみ上げ顔を真っ赤にした。


 あの話し合いの後、国内チームは今後の具体的な業務内容を詰めて、会議は解散になった。

「明日からは忙しくなるぞ! お前ら今日は早く帰れ!」

 相田の号令で、みんなは一斉に席を立ったのだ。


 加賀見と笑いながらエントランスをぬけた穂乃莉は、目の前に立つ人影を見て、はっとして足を止める。

 ショルダーバッグの紐を握り締めるように立っているのは白戸だ。


「あの……」

 白戸は小さな声を出すと、穂乃莉の前に歩み寄る。

「加賀見さんにお話ししたいことがあります。少しだけお時間いただけませんか?」

 そう言った白戸の顔つきを見て、穂乃莉は内心ドキッとした。

 明らかに今までの白戸とは違う真剣な表情。

 どこか(はす)に構えて、人を小馬鹿にした仕草を取っていた時とは別人のようだ。


「……わかった」

 穂乃莉は少しだけ考えた後、小さくそう答えると、隣の加賀見を見上げる。
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