清くて正しい社内恋愛のすすめ
 穂乃莉は本店の中庭の改修指示、加賀見は旅館組合への説明と周辺旅館への協力の要請。

 相田は久留島グループとの連携のパイプ役、玲子は募集パンフレットの作成とプロモーションの企画。

 卓はツアーバスの手配と運行スケジュールの作成、花音は星空ガイドの手配と上映内容の作成だ。

 この人数でここまでできるのか不安はあったが、それぞれの動きを加賀見が細かく指示してくれたので、みんな何の迷いもなく業務を開始できたのだ。


 窓の外にはつい数日前に通り過ぎた、見慣れた景色が映りだす。

 穂乃莉はパソコンを閉じると、そっと隣で真剣な表情をしている加賀見を見上げた。

 今回、加賀見が穂乃莉と久留島を守る案として考えた星空ツアー。

 このツアーを開催するということは、つまり東雲に真っ向から盾つくことを意味する。


「ねぇ、加賀見……」

 加賀見はキーボードを叩いていた手を止めると、小さく首を傾げながら穂乃莉に目を向けた。

「お母さんのこと……本当にいいの……?」

 穂乃莉はそのことだけが、ずっと心に引っかかっていた。
< 344 / 445 >

この作品をシェア

pagetop