清くて正しい社内恋愛のすすめ
「穂乃莉お嬢様」

 改札をぬけるとすぐに、正岡の元気な声が二人を出迎える。

「正岡! この新幹線だって知ってたの!?」

 穂乃莉は驚いた声を上げると、急いで正岡に駆け寄った。


 タクシーで本店に向かえば良いと思っていたこともあり、今回の帰省を穂乃莉は正岡には連絡していなかった。


 ――課長が本社と連絡を取り合ってるから、そこから知ったのかな?


 穂乃莉が一人納得しながら見つめた正岡の顔は、つい先日帰省した時のような疲れた顔はしていない。

 穂乃莉は少し安心すると、正岡に笑顔を見せた。


「おばあさまの具合はどう?」

「まだ入院なさっていますが、ご心配はいりません。お医者様も、検査が終わればすぐに退院できるだろうと、お話しになっておいでです」

「そう、良かった……」

 ほっと胸をなでおろした穂乃莉は、隣に立つ加賀見に気がついて、慌てて振り返る。


 ――加賀見に、正岡を紹介しなくちゃ。


 そう思った穂乃莉よりも先に、正岡が口を開いた。
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