清くて正しい社内恋愛のすすめ
「加賀見さんもよくおいでで。お疲れになったでしょう?」

「いえ、正岡さんこそ、わざわざありがとうございます」

「この度の件、何卒よろしくお願いいたします。社長からも、星空ツアーの件よろしく頼むと、伝言を承っております」

「はい。精一杯努力いたします」

 穂乃莉を置いてけぼりにして軽快に会話をする二人に、穂乃莉はキョトンとした顔をする。

 まるで以前から知り合いのような口ぶりで、話をしているのはどういうことなのだろう。


「穂乃莉、どうかしたか?」

 二人の顔を交互に見比べる穂乃莉に、加賀見が横から声を出し、穂乃莉ははっと我に返った。

「あ、あの。二人って、知り合いだったっけ?」

「あぁ……まぁ」

 加賀見は小さく含みのある声を漏らすと、正岡と目配せするように顔を見合わせる。

 でもそれ以上は、二人ともほほ笑むだけで何も言ってくれない。


「さぁさぁお嬢様、山ほど積みあがった仕事が待っていますぞ」

 正岡は楽しそうにそう言うと、キャリーバッグをトランクに積み込み、サッと後部座席の扉を開く。

「え? どういうこと……?」

 戸惑う穂乃莉は、そのまま加賀見に促されるように車に乗り込んだ。
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