清くて正しい社内恋愛のすすめ
　正岡が運転する車は、木々が囲む小道を緩やかに上ると、本店の玄関前へと到着した。

　この後は、穂乃莉は本店で中庭改修の打ち合わせがあり、加賀見は旅館組合の会長のアポイントを取っているため、そちらに一人で向かうことになっている。

　正岡がトランクから取り出したキャリーケースを受け取ると、二人は一旦荷物を置くために本店の玄関をくぐった。


　穂乃莉の姿が玄関先に見えると、従業員たちが足早にこちらに向かってくるのが見える。

「お嬢様、お帰りなさいませ。本社の方々はすでに到着されて、今は応接室でお待ちです」

　穂乃莉のキャリーケースを預かりながら、従業員が手早く伝える。

　穂乃莉はうなずくと「ありがとう」と短く返事をした。


　本店の中庭をプラネタリウムに改修するためには、いくつもクリアしなければならない課題がある。

　でも幸い久留島グループは商業施設の運営も行っており、久留島本社からその分野に強い社員が複数名チームを組んで集まってくれることになっていた。
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