清くて正しい社内恋愛のすすめ
 正直今回の改修は穂乃莉も全く初めてのことで、右も左もわからない状況だったので、その申し出はとてもありがたかった。


 ――本社からその話が来たのも全部、加賀見が事前に本社に話を通してくれたからなんだよね。


 この短期間で加賀見は、どれだけ膨大な量の事を考えたのだろう。

 その思考回路を見てみたいと思ってしまうほど、加賀見は国内チームのメンバーそれぞれの動きを事細かに指示してサポートしてくれたのだ。


「あれ? 加賀見……?」

 そんな事を思いながら振り返った穂乃莉は、ふと近くに加賀見がいないことに気がついた。

 キョロキョロとしながらロビーをぬけた穂乃莉は、中庭の前で佇んでいる加賀見の姿を見つける。

「ここにいたんだ」

 穂乃莉が声をかけると、加賀見はほほ笑みながら穂乃莉を振り返った。


「ここが、穂乃莉の大切にしてた場所なんだな」

「うん。そう」

 穂乃莉は加賀見の隣に立つと、目の前の中庭に目を向ける。

「実際に見ると迫力が全然違うな。この庭だけが、別世界みたいだ」

「おばあさまの自慢の庭だからね」

 穂乃莉はくすりと肩を揺らす。
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