清くて正しい社内恋愛のすすめ
「よーし! じゃあ、みんなで納会になだれ込みますか!」

 玲子が意気揚々と立ち上がった。

「わーい! 行きますぅ」

「花音、今日はつぶれるなよ」

「はーい。善処しまぁす」

「本当かなぁ?」

 楽しい笑い声に包まれながら、それぞれが会議室を後にする。


 穂乃莉は部屋を出ていくみんなを見送りながら、そっと加賀見を振り返った。

 加賀見は資料を手に静かに立ちあがるところだ。

「ありがとね」

 穂乃莉が小さく声を出すと、加賀見は「何が?」とぼけたような顔をしている。

「もう! ヒントくれたでしょう? 悔しいけど……加賀見のおかげで、新しいプランが思いついた」

 穂乃莉は照れ隠しするように頬をぷっと膨らませると、そっぽを向いた。

 やはりまだ、加賀見と二人きりになると照れてしまう。

 社内恋愛することになったと言っても、何をどうしたらいいのかわからない。


「じゃ、じゃあ。私は先に行くね……」

 穂乃莉は体温が上昇して火照る顔を手で仰ぎながら、足早に入り口へと向かった。
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