清くて正しい社内恋愛のすすめ
 今はちょうど梅が見頃を迎えており、白い小さな花々が枝の先に可憐に咲き誇っていた。

 穂乃莉は特にこの梅の花が好きだ。

 華やかな桜もいいけれど、梅の花の清々(すがすが)しく凛とした佇まいが、なんだか自分に通じる様な気がしていたのだ。


「本当は少し迷ってたんだ」

「え?」

 加賀見が低い声を出し、穂乃莉は首を傾げながら加賀見を見上げた。

 加賀見は中庭の奥で咲いている、梅の木をじっと見つめている。


「何を、迷ってたの?」

「中庭をプラネタリウムにすること。穂乃莉の思い入れのある場所に、そんな風に手を加えて良いのかなって……」

 穂乃莉は驚いて目を丸くすると、少しうつむいた加賀見を見上げる。

 加賀見がそんな事を気にしているとは思いもよらなかった。


「でも、俺にはその方法以外思いつかなかった。お前と久留島を守る方法が……」

 加賀見は拳をぐっと握り締める。

「加賀見……」

 穂乃莉は手を伸ばすと、加賀見の手をそっと取った。

 そして固く握られた長い指先を伸ばすと、自分の指をゆっくりと絡める。
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