清くて正しい社内恋愛のすすめ
 穂乃莉はキョロキョロと加賀見の姿を探したが見つからなかった。

「正岡。加賀見から、何か連絡入ってる?」

 穂乃莉は夕飯が用意された大広間のテーブルにつくと、お茶を注いでいる正岡を見上げる。

「はい。夕方にあちらで食事をして帰ると連絡がありましたので、もうそろそろお戻りになるでしょう」

 正岡は穏やかな口調でそう言うと、テーブルにお茶の入った湯飲みを置く。

「いただきます」

 穂乃莉は手を合わせると、そっと箸を持ち上げ食事を口に運んだ。


 食事をして帰るということは、会長との話し合いはうまくまとまったということだろうか?

 組合の会長はここら辺でも堅物で有名な人だ。

 穂乃莉も幼い頃からよく知っているため悪い人ではないのだが、少し癖があると言えばそうだろう。


 ――でも、加賀見なら大丈夫だよね。


 穂乃莉がもぐもぐと口を動かしながらそんな事を考えていると、「そうそう」と正岡が口を開く。

「加賀見さんのお部屋は、客室にご用意しておりますので、戻られたらお声かけください」
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