清くて正しい社内恋愛のすすめ
「会長……」

 穂乃莉は会長たちの姿に、目頭が熱くなる。

 一時はバラバラになりかけたこの温泉街が、また一つになろうとしているのだ。


「こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」

 穂乃莉は涙ぐんだ声でそう言うと、ぐっと頭を下げた。

 その後、会長たちは、正岡に案内されるように部屋を出て行った。

 穂乃莉は会長たちを見送った後、すぐに加賀見の枕元に駆け寄る。

 加賀見はほんのり赤くなった顔で、眠っているように見えた。


「もう、無理するんだから」

 そう言いながら髪に触れようとした伸ばした穂乃莉の手は、急に加賀見の左手に捕らえられる。

「加賀見!? 起きてたの!?」

 穂乃莉が驚いて声を出すと、加賀見は「あぁ」と小さく返事をしながら、もぞもぞと上半身を起き上がらせた。


「大丈夫? お水持ってこようか?」

 顔を覗き込んだ穂乃莉は、途端に加賀見に腕を掴まれると、ぐっと身体を抱き寄せられる。

「きゃ」

 抵抗する間もなくベッドに押し倒された穂乃莉に、加賀見が熱っぽい唇を重ねた。
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