清くて正しい社内恋愛のすすめ

リアルな言葉

 それから数日が過ぎ、中庭の改修工事も本格的に始まった。

 プラネタリウムに生まれ変わるべく、日々変化する中庭の様子を、穂乃莉は期待に胸を弾ませながら見守った。


 今回の改修工事で、穂乃莉がただ一つだけお願いしたのは、中庭の日本庭園の雰囲気はそのままに残してほしいということだった。

 元々は祖母自慢の庭だったこともある。

 それに、穂乃莉が幼い頃に感動した“庭園の中で星空を見上げる”という体験を、そのままお客様に提供したいと思ったからだ。

 そのため基本的には庭園部分はほとんどいじらずに、プラネタリウムの機能のみを取り込む形で工事は進んでいる。


「いよいよ始まるんだ」

 穂乃莉は中庭のガラスに手を当てると、口元をキュッと横に引いた。

 この改修工事が終わり次第、いよいよツアーは解禁となる。

 加賀見が考えたこの“星空プロムナードツアー”のアイディアが、大きなうねりとなって久留島やこの温泉街を守るものになって欲しい。

 穂乃莉は祈るように両手を胸の前でぎゅっと握った。
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