清くて正しい社内恋愛のすすめ
「穂乃莉、お待たせ」

 すると後ろから声をかけられて、穂乃莉は中庭から目線を移動させる。

 目の前には、課長との電話での打ち合わせを終えた加賀見が笑顔で立っていた。


 今回の出張の予定をすべて終えた穂乃莉と加賀見は、明日は一旦トラベルに戻る予定だ。

 そのため今日は早めに工事を終了し、二人は他の社員たちと共に、組合の人たちが開いてくれた宴会に出席することになっている。

 穂乃莉は加賀見の隣に駆け寄ると、並んで歩き出した。


「課長たちの状況はどうだった?」

「あっちもほぼ準備は終わってる。あとは工事が終わり次第、大々的に宣伝をかけるのを残すのみだな」

「みんなさすがだね」

「ほんと、よく頑張ってくれたと思うよ。まぁそれは、穂乃莉も一緒だけど……」

「加賀見もでしょ?」

「まぁね」

 穂乃莉が見上げると、加賀見は穂乃莉の肩を抱き寄せて、コツンと頭をぶつける。

 寄り添いながら歩いていた二人は、他の社員とも合流して宴会の会場になっている、組合の会長の経営する旅館へと向かった。
< 362 / 445 >

この作品をシェア

pagetop