清くて正しい社内恋愛のすすめ
 会長の話を聞きながら、奥の席で楽しそうに笑う加賀見がとても誇らしく思えた。

 加賀見は穂乃莉だけじゃなく、どれだけ多くの人たちを守ってくれるんだろう。


 すると会長が急に明るい顔つきになると、正岡の肩をガシッと勢いよく掴む。

「いやぁ、正岡さん。久留島もこれで安泰ですなぁ」

 会長は正岡の肩を何度も叩きながら強く揺さぶると、豪快な笑い声を上げて再び席を移動していった。


 穂乃莉は会長の勢いに圧倒されつつ、その言っている意味が分からずに小さく首を傾げる。

 星空ツアーはまだこれからが本番だ。

 東雲の開発が止まるかもわからないのに、久留島が安泰とは、会長は何を言っているのだろう?


「ツアー開始はこれからなのに、会長ってば気が早いんだから」

 穂乃莉がくすりと肩を揺らしながら、隣の正岡を振り返ると、正岡はにっこりと穂乃莉にほほ笑みを返す。

「お嬢様はやはり、少しばかり鈍感なようですね」

「へ?」

 穂乃莉は何の事だかさっぱりわからない。

「あれは、お嬢様の“婿探し”の事を言っているんだと思いますよ」

「む、婿って……え!? それって……」


 ――加賀見の事……!?
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