清くて正しい社内恋愛のすすめ
「あ、あの、えっと……」

 急にどもり出した穂乃莉にくすりと肩を揺らすと、加賀見が穂乃莉の瞳を覗き込むように、ぐっと顔を近づけた。

「ちゃんと、考えてるから」

「え……?」

「俺も、ちゃんと考えてるから」

「そ、それって……」


 ――つまりは、どういうこと!?


 穂乃莉の頭に、はてなマークが飛び交いだす。

 知りたいことは、加賀見の言葉でさらに闇の中に迷い込んでしまったようだ。


 しきりに首を傾げる穂乃莉に、加賀見は再びくすりと笑うと、穂乃莉をギュッと抱き寄せる。

「ところで……穂乃莉は今日も、自分の部屋で寝るつもり?」

「え!?」

 不意を突かれた加賀見の言葉に、穂乃莉はパッと顔を真っ赤にする。

 さっきの言葉の意味もわかっていないのに、どこまで加賀見は穂乃莉の心をかき回すんだ。


「あ、当たり前でしょう……?」

「本当に?」

「だ、だって……みんなに気づかれちゃうかもだし……」

「いまさら?」

「そんな……いまさらって……」

 そりゃあ、もうみんな二人の関係には、気がついているかも知れないけれど……。
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