清くて正しい社内恋愛のすすめ
「テレビ放送開始直後から、この“星空ツアー”がトレンドに上がって来ていますね」

「他には?」

「今のところは……」

 斎藤がそう言った時、目の前のスクリーンの映像が大きく切り替わった。


 緊張した顔つきで、リポーターのインタビューを受けているのは、温泉街の旅館組合の会長だと紹介された男性だ。

『えー、実は今この地域で、大規模なスパリゾート施設の開発計画が進んでおりまして……』

 男性のしわがれた声と共に、東雲がスパ施設を建設予定の地域が、大きく映し出される。

『私共としましては、この温泉街の環境が大きく変わってしまうのではないかと、ひどく心を痛めております。皆さまに愛されるこの美しい星空を守りたい。その一心で、開発企業様にも協力をして頂けるよう、全力でお願いをしていく所存です。この星空プロムナードツアーを応援してくださる皆さまの声も、ぜひ届けていただけましたら幸いです』

 男性は緊張のあまり、ロボットのようにぎこちなく頭を下げる。

 でもそれが余計に、見ている人の心を揺さぶった。


「やられたな……」

 東雲はふっと口元を緩ませると、小さくつぶやく。
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