清くて正しい社内恋愛のすすめ
「社長?」

「久留島に、してやられた。斎藤、すぐにSNSをチェックしろ」

 東雲の厳しい声に、会議室はシーンと静まり返る。

 みんなが息をのむ中、慌ててSNSを開いた斎藤の顔は、徐々に強張った様子に変わる。

 そこに次々と投稿されていたのは、開発を非難する視聴者からの声だった。


 他の社員たちも慌ててスマートフォンを取り出すと、SNSを確認する。

 投稿はまるで一気に火がつき膨れ上がるかのように、今もなお増長している。

「これじゃあまるで、東雲が悪役みたいじゃないか……」

 誰かが愕然とした声でつぶやいた時、再び会議室の扉が勢いよく開かれた。


「社長!」

 青い顔で飛び込んできたのは財務部長だ。

「東雲グループの各施設に批判の電話が鳴り続いています。ホテルはキャンセルが入りだしているとか。それと……」

「それと?」

 東雲の鋭い声に、財務部長が一旦口ごもる。

 そして言いにくそうに、苦しげな顔を上げた。


「我が社の株価が……大幅に下落しています」

 しばらくして絞り出すように言った財務部長の言葉に、社員たちのどよめきが室内に広がる。
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