清くて正しい社内恋愛のすすめ
 それなのに、どうして今日はこんなにも、心がモヤモヤとして晴れないのか。

「もう♡ 加賀見さんったら」

 良く通る高い声が耳に響き、穂乃莉は思わず顔を上げる。

 加賀見の隣に座っている色白の可愛らしい女性が、ころころと笑いながら加賀見のシャツの袖を引っ張っていた。


 穂乃莉は鼻息荒くグラスを掴むと、勢いよく喉に流し込む。

 途端にアルコールが体内を駆け巡り、ぐらりと視界が揺れた。


「あれぇ? 穂乃莉さん珍しいー。今日は弾けてますねぇ」

 食事を取りに行っていた花音が、目を丸くしながら隣に腰かけた。

 両手に持っているお皿には、色とりどりの前菜が並んでいる。


 「これ、今の流行りらしいですよぉ」

 花音は穂乃莉のお皿に、いくつか前菜を取り分けると、嬉しそうに指をさした。

 コンソメのゼリーで固められたキューブ型の前菜は、小さく刻んだオクラやトマト、マッシュルームやニンジンを閉じ込めて、カラフルな宝石箱の様だ。
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