清くて正しい社内恋愛のすすめ
「あとは東雲がどう動くか……ですね、課長」

「そうだな」

 加賀見が顎に手を当てた時、向かいに腰かけていた相田のスマートフォンが鳴る。


「はい、はい……え!? 本当ですか!?」

 相田が珍しく取り乱したように大きな声を出し、驚いた全員の視線が集まった。

 穂乃莉も何事かと、じっと相田の顔を見つめる。

 電話の様子からして、今の番組に関することのようだが……。

 相田はその後しばらく話を続けていたが、画面をタップして電話を終えると、静かに顔を上げた。


「今、久留島本社から連絡が入った。東雲が……開発計画を見直すと連絡してきたそうだ」

 急に明るくなった相田の声に、一瞬息を飲んだように、その場がシーンと静まり返る。

 そして次の瞬間、みんなは「わぁっ」と、大きな歓声を上げて飛び上がった。


「加賀見……」

 加賀見を振り返った穂乃莉の瞳からは、もう涙が溢れている。

 加賀見は優しくうなずくと、穂乃莉の肩をグッと抱き寄せ、そのままきつく抱きしめた。

 穂乃莉は嗚咽をもらすと、加賀見の腰に手を回し、顔をうずめる。

 加賀見も泣いているのだろうか。

 穂乃莉を強く抱きしめる手が、かすかに震えていた。
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