清くて正しい社内恋愛のすすめ
「やったー! やったね、穂乃莉ちゃん!」

 玲子が真っ先に、抱き合う穂乃莉と加賀見に後ろから飛びつく。

「本当に良かったー! お二人が久留島を守ったんですよ!」

「もう私、泣きすぎてボロボロですぅ」

 その後から重なるように、花音と卓も二人に飛びついた。


 抱き合って喜ぶみんなの顔は、もう涙でぐちゃぐちゃだ。

 穂乃莉はそんなみんなの顔を見ながら、何度も「ありがとう」と震える声を絞り出した。


 ここまで来られたのは、みんなのおかげだ。

 穂乃莉一人だったら、もうとっくに諦めていた。

 加賀見が側で支えてくれて、ヒントをくれて、トラベルや久留島グループのすべての社員が一緒に戦ってくれたからこそ、この結果が得られたんだ。


 ――みんなで久留島を、温泉街を守ったんだ。


 穂乃莉の脳裏に、祖母や正岡、会長や組合のみんなの顔が浮かぶ。

 きっと今頃、あちらでもお祭り騒ぎになっているだろう。

 会長のところでは、もう祝杯をあげているかも知れない。

 豪快に笑う会長の声が、今にも聞こえてきそうだ。
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