清くて正しい社内恋愛のすすめ
「あなたがトラベルに入りたいと言った時は、正直不安で反対したけど、私が間違ってたわね。あなたは本当に素敵な仲間に巡り合えたと思ってるわ」

 祖母の言葉に、穂乃莉は次第に目頭が熱くなる。

「それと……」

 祖母はそう言うと静かに立ちあがり、扉の前に立っている加賀見の元へと歩いて行った。


 今回の加賀見の働きぶりは、祖母も正岡から十分聞いているはずだ。

 まだ穂乃莉から加賀見の事を紹介はしていないが、きっと大丈夫だろう。

 穂乃莉は後ろから、二人の様子を静かに見守った。


 すると先に祖母がにこやかな声を出す。

「加賀見くん、お元気そうね」

「はい。ご無沙汰しております」

 その挨拶を聞いた途端、穂乃莉はキョトンとその場で何度も瞬きをした。


 ――加賀見とおばあさまって、初対面だよね……?


 でもどう考えても今の挨拶は、すでに顔見知りのように見える。

 そう言えばこの感じ、加賀見と正岡が初めて会った時にも思ったような……。


 すると祖母が続けて声を出した。

「穂乃莉の心を(とら)えてるのは誰かと思ってたけど、やっぱりあなただったのね」

 祖母の言葉に、穂乃莉は小さく「え!?」と声を上げる。
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