清くて正しい社内恋愛のすすめ
「あざとーい」

 花音はその様子を一瞥すると、アボカドとサーモンをのせたフランスパンにかじりつく。

 穂乃莉も負けじと生ハムとクリームチーズをのせたパンにかじりついた。


「ねぇ、加賀見の隣にいる子って……」

 しばらくして穂乃莉は花音に肩を寄せると、小声で話しかける。

白戸 咲良(しらと さくら)ですよ。私の同期なんですよねぇ」

「もしかして、加賀見と噂になってたっていう、受付の子?」

 花音はもぐもぐと口を動かしながら大きくうなずいた。

「まぁ、私は信じてないですけど」

「ねぇ。噂って、どんな噂だったの……?」


 聞きたいような、聞きたくないような気持ちを抱えながら穂乃莉は顔を上げる。

 穂乃莉と契約恋愛をするのだから、今現在、加賀見と白戸に深い関係があるとは思えない。

 それでも今日ここに来てからのモヤモヤとした感情は、今はっきりと形になって居座っている。

 それが何か確かめるためにも、噂のことを聞きたかった。


「本当に聞きたいですかぁ?」

 花音は大きく首を傾げると、穂乃莉の顔を覗き込んだ。
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