清くて正しい社内恋愛のすすめ
 穂乃莉は加賀見の腰に回した手にぐっと力を込めると、その愛しい温もりを抱きしめる。

「穂乃莉、どうしたんだよ?」

 加賀見は戸惑うようにそう言いながらも、穂乃莉の肩を優しく抱きしめた。


「もう♡ お熱いんですからぁ」

 (はや)し立てる声に包まれながら、二人は次第に会場の真ん中へと押し出されていく。

「んじゃ、ちょうど良い頃合(ころあ)いなので……」

 すると玲子が一段と明るい声を響かせた。


「えー実は、最初の予定ではここで加賀見くんから穂乃莉ちゃんへ、お疲れ様の花束を渡してもらうことになってたんですが……。加賀見くんから提案がありまして、急遽内容を変更させていただきましたー」

 すると花音たちの掛け声で、穂乃莉と加賀見の周りを、みんながぐるりと取り囲むようにしゃがみ込んだ。

 穂乃莉は何が起こったのかさっぱりわからず、驚いた顔つきのままキョロキョロとしてしまう。


 そんな穂乃莉の様子ににっこり微笑むと、玲子がおもむろに口を開いた。

「皆さん、もうお分かりですよね? 準備は良いですかー?」

 玲子が辺りをぐるりと見渡すと、しゃがみ込んだ社員たちは、ワクワクした表情で首を縦に振っている。
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