清くて正しい社内恋愛のすすめ
「ここは最近オープンしたばかりの施設なんです」

 穂乃莉はそう言うと、大きく開けた場所に二人を案内する。

 そこは真ん中の広場を中心に、ぐるりと360度取り囲むように土産物屋や飲食店が立ち並ぶ場所だ。

 中心の広場では、毎朝新鮮な野菜や果物、食品を取り扱うマーケットが出店され、早朝にも関わらず連日多くの観光客で賑わっている。

 観光シーズンには“星空プロムナードマルシェ”と銘打って、お昼前から星空ツアーが始まる夕方までの時間帯に、今流行りのスイーツ店やキッチンカーなどが出店するイベントも開かれていた。


「お母さま、良かったら足湯に浸かっていきませんか? 疲れが一気に吹き飛びますよ」

 穂乃莉はその一角にある人気の足湯スポットを指さした。

「あら! 私、足湯って一度経験してみたかったのよね。あなたもどう?」

 母はウキウキとした声で、父を振り返る。

「僕はちょっとお店を回りたいから、二人でゆっくり浸かってくるといいよ」

 父の声に母は大きくうなずいた。
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