清くて正しい社内恋愛のすすめ
 そうだ。あれは加賀見と社内恋愛の契約をすると決めた日……。

 穂乃莉が扉を半ドアにしてしまい、ピーピーという大きな警報音が鳴ったんだった。


「ここは……警報機はついてないよな……?」

 加賀見はわざとらしく、扉の辺りを見回した。

「もう! また、そうやってからかう!」

 穂乃莉は再び顔を真っ赤にすると、両手をグーにして加賀見に突っかかる。

 でもその手は、あっけなく加賀見にかわされると、穂乃莉はそのまま抱きすくめられた。


「こうすれば良いんだよ」

 穂乃莉の耳元で低い声が聞こえたのと同時に、加賀見の背後で扉の鍵がカチャリとかけられた音が響く。

 そして次の瞬間、さっきまでのキスとは比べ物にならない程、何倍も甘いキスが穂乃莉に降りそそいだ。


 ――あぁ、ダメだ。また完敗だ……。


 もうこうなってしまったら、穂乃莉は何も抵抗することができないと、加賀見は知っているのだ。

 そうだとわかっていながらも、穂乃莉は途端に加賀見のキスに溺れてしまう。


 もう何度、自分はこの腹黒王子のキスに降参したらよいのだろう。

 じりじりと奥のソファに押し倒されながら、穂乃莉はくすりと肩を揺らした。


「どうした?」

 加賀見がそっと唇を離すと、優しい顔で穂乃莉を見下ろす。
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