清くて正しい社内恋愛のすすめ
「そっか。でも一年後にはまた引っ越しなんだから、そのことも見越しとけよ」

　加賀見がコツンと頭をぶつけてきて、穂乃莉はパッと頬を真っ赤にした。

　そう、一年後には穂乃莉と加賀見は結婚して、晴れて一緒に暮らすことになる。

　今からそれを考えただけでも、ドキドキと鼓動は駆け足になりそうだ。


「加賀見もね」

　穂乃莉が小さく見上げると、加賀見は「当たり前だろ」と言いながら、穂乃莉の肩を優しく抱き寄せる。

　そして加賀見が穂乃莉の頬にキスをしようとした瞬間、横断歩道の奥の広場で大きな音楽が流れだした。

　驚いた穂乃莉は慌てて広場に目を向ける。


「なにかイベントかな？」

　加賀見が声を出し、穂乃莉も首を伸ばして広場を覗いた。

　広場はすでに大勢の人でごった返している。

　入り口には横断幕が掲げられており、ゆらゆらと風に揺られるそこには“ご当地フードフェス”と大きな文字で書かれていた。


　どうも広い会場には、いくつもの飲食店のブースが出店されているようだ。

「まだ時間があるし、ちょっと寄っていくか？」

　加賀見が軽く指をさし、穂乃莉は大きくうなずき返した。
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