清くて正しい社内恋愛のすすめ
 会場内は“ご当地フェス”というだけあって、各ブースには全国の様々な選りすぐりのお店が出店している。

 美味しそうな匂いに誘われて、穂乃莉も加賀見もワクワクしながらブースを見て回った。

 そしてあるブースにさしかかった時……。


「お久しぶりですにゃんー!」

 どこからか、聞き覚えのある叫び声がした。

「……にゃん?」

 穂乃莉と加賀見は顔を見合わせる。

 そんな二人の前にお約束のように飛び出してきたのは、やはり“びわにゃん”だ。

 びわにゃんは狭いブースの隙間を大きな身体を揺らしながら穂乃莉たちに突進してくる。


「びわにゃん!?」

 思わず声を出した穂乃莉の前に来ると、びわにゃんはふかふかの手で穂乃莉の両手を握った。

「やっぱりそうにゃん! 綺麗なお姉さんにゃん」

 びわにゃんは相変わらずな様子で、その場でぴょんぴょん飛び跳ねている。


「今日はフードフェスのために、出張してきたにゃん。観光課のおじさんにこき使われてるにゃん」

 びわにゃんは急にこそこそ声になると、ブースの奥にいるスーツ姿の男性を指さした。
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