清くて正しい社内恋愛のすすめ
「なんだ、びわにゃんって町の公式キャラなんだな。てっきりあの店のオリジナルキャラなのかと思ってた」

 加賀見の声に、びわにゃんはエッヘンと反り返る。

「びわにゃんすごいんだにゃん。商品いっぱいアピールしてるにゃん。なのに観光課のおじさんが、そろそろ他のキャラに変えようかなんて話してるにゃん」

 びわにゃんは大きな身体で小さく肩を落とす。

 するとしばらくうつむいていたびわにゃんが、穂乃莉の鞄を指さしながら急にむくっと顔を上げた。


「お姉さん! チャーム買ってくれたにゃん!?」

 穂乃莉は加賀見と顔を見合わせると、バッグチャームのついた鞄を持ち上げてにっこりとほほ笑んだ。

「お、お兄さんは……!?」

 びわにゃんは加賀見を勢いよく振り返り、あからさまにガックリと肩を落とす。

「お兄さんは買ってないにゃん……」

「いや、今日は鞄を持ってないからだよ。会社用の鞄にはちゃんとついてるから」

「本当にゃん?」

「いや、そもそも。このチャームは、恋人に贈るんだろ? 俺がガッカリされるのは筋違いだ」

 加賀見の言葉に、びわにゃんはしばしキョトンとする。
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