清くて正しい社内恋愛のすすめ
「あのね、ずっと気になってて……。お母さまと東雲さんのこと」

「え?」

 加賀見は突然穂乃莉が出した名前に、少し驚いたような顔をしている。


「このままじゃ、いけないと思うの。だから私、お節介してもいいかな?」

「お節介?」

「そう。二人を会わせたいの」

「え!? 会わせる!?」

 加賀見は身体を起こすと、珍しく動揺したような声を出した。


「加賀見だって気にしてるんでしょう? どうにかしたいって思ってるんでしょう?」

 穂乃莉も身体を起こすと、加賀見の手にそっと自分の手を重ねる。

「東雲さんに会った日から、加賀見がそう思ってることはわかってたの」

「……穂乃莉」

 すると穂乃莉をじっと見つめていた加賀見が、急ににっこりとほほ笑んだ。


「やっぱり穂乃莉には(かな)わないな」

「え?」

 穂乃莉は何のことかわからずに首を傾げる。

「穂乃莉は俺のこと、お見通しなんだなと思って」

「そ、そんなことないよ! 加賀見が私のこと、何でもお見通しなんでしょう?」

「違うよ」

「どういうこと?」

「俺は全部、考えてやってるんだよ。穂乃莉を振り向かせるために、契約恋愛を言い出して、キスしたみたいにね」

 加賀見はそう言うと穂乃莉の頬に優しく触れる。
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