清くて正しい社内恋愛のすすめ
 穂乃莉がまじまじと覗き込むと、加賀見はさらに照れたような顔つきになる。

 こんな腹黒王子の顔を見られるなんて貴重だ。

 穂乃莉はくすりと肩を揺らすと、加賀見のシャツの胸元をキュッと引っ張る。


「ねぇ加賀見……。今日は、加賀見の部屋に行ってもいい?」

「え?」

「私の部屋は引っ越しの準備で片付いてないし……。今日はこのまま帰りたくないっていうか……」

 こんな大胆なことが言えるのも、カップルシートのおかげだろうか。

 上目遣いで見上げる穂乃莉の肩に回す手に力を込めると、加賀見がコツンと優しく額をぶつける。

「いいよ……」

 その低くて愛しい声を聞きながら、穂乃莉は心が満たされて、今にも溢れだしそうになっていた。



 その日の夜、穂乃莉は大好きな加賀見の部屋で、加賀見の香りがするシーツにくるまれながら、めまいがするほど加賀見に抱きしめられた。

 何度も甘いキスを繰り返しながら、穂乃莉はくすりとほほ笑む。


 ――やっぱり、カップルシートは必要だよね?


 二人の約束のデートの夜は、甘いため息とともに、ゆっくりと更けていったのだ。



【おわり】
< 442 / 445 >

この作品をシェア

pagetop