清くて正しい社内恋愛のすすめ

おまけ ※本編のP.414とP.415の間のお話です

 穂乃莉が本店の女将になって三ヶ月が過ぎ、ついに今日から加賀見がこちらにやってくる。

 穂乃莉も今日は加賀見の引っ越しの手伝いで、丸一日休みをとっていた。


「やっぱり男の人の一人住まいだと、荷物はシンプルだね」

 穂乃莉は食器を棚に並べながら、加賀見を振り返る。

「そうか?」

 加賀見の声は隣の部屋から聞こえてきた。


 ついさっき引っ越し業者が、大型の家具を設置して引き上げたところだ。

 この調子だと、片付けもさほど時間はかからないだろう。

 今日の夕食は祖母と一緒に取ることになっている。

 その前に片付けられるところは終わらせた方がいいと、穂乃莉は手早く動き回っていた。


「ねぇ、コーヒーメーカーってここで良いの?」

 穂乃莉が大きな声を出しながら振り返った時、突然後ろに来ていた加賀見に抱きすくめられた。

 加賀見はそのまま、穂乃莉の首元にぐっと顔をうずめる。

「ちょ、ちょっと。加賀見!?」

 ジタバタする穂乃莉を逃すまいと、加賀見の手に力がこもる。

「もう……」

 穂乃莉はついに諦めて、加賀見に抱きしめられるままに身を任せる。

 すると加賀見がそっと顔を上げた。
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