清くて正しい社内恋愛のすすめ
「花音ちゃんから聞いたの……社内で噂になってるって」

「噂?」

「加賀見と白戸さんが、できてるって噂……」

 加賀見から「はぁ」と深いため息が聞こえ、穂乃莉はドキッとすると口を閉ざした。


 この、ため息の意味は……?

 ただの“契約恋愛”なのに、こんなことを問い詰める穂乃莉に対するものだろうか。

 そう考えながらも、穂乃莉はもう事実を聞かないと納得できない程に、気持ちが溢れそうになっていた。


「あの子としたの……? キス……」

 どこかで否定して欲しいと思いながら、小さく声を出した。


「したよ」

 しばらくして聞こえた加賀見の言葉に、穂乃莉は自分でも驚くほどショックを受ける。

 自分から聞いたくせに傷つくなんて、本当に身勝手もいいところだ。


「キスしたけど、できてるって噂は事実じゃない」

「当たり前でしょ!?」

 加賀見の言葉に、穂乃莉は途端に食ってかかる。

「加賀見にとってはキスなんて、他愛もないものかも知れないけど……」

「それは違うよ」

 加賀見は穂乃莉の言葉を遮るようにそう言うと、優しく穂乃莉の両肩に手をかけた。
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