清くて正しい社内恋愛のすすめ
「他愛もないものなんかじゃない」

「じゃあどうして? 白戸さんのこと、大切に思ってるってこと? だったら……」


 ――なんで私と“社内恋愛しよう”なんて言い出すの……?


 穂乃莉は心の中で叫びながら、次第に瞳がじんわりと潤んでくるのを感じる。


「あの子の行動が行き過ぎてたんだよ」

 加賀見は再びため息をつくと、穂乃莉の隣にドサッと腰かけた。

「え……? どういうこと……?」

 穂乃莉は訳がわからず小さく首を振る。


「何度断ってもしつこく言い寄られた。ストーカーまがいのこともされた。それで一度、外で会って話をしたんだ」

「え……」

「俺は誠意をもって話をしたつもりだよ。でも伝わらなくて。しまいには、キスしてくれたら諦めるって」

「それでキスしたって言うの!?」

 穂乃莉は叫び声を上げた。

「あまりに泣くからさ」

「バッカじゃないの!?」

 穂乃莉は思わず、加賀見のスーツの胸元を両手で掴むと、何度も小さく揺する。


「加賀見にキスされて、諦められるわけないでしょう!? 余計、虜になるだけじゃない!」

「そうなの?」

「そうだよ! 私だって、あの日から、加賀見のキスが消えなくて……」
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