清くて正しい社内恋愛のすすめ
 穂乃莉は物心ついた時から、そんな仕事に厳しく多忙な祖母の元で育った。

 というのも、穂乃莉の母は身体の弱い人で、穂乃莉がまだ幼い頃に亡くなっている。

 周りから聞いた話では、母が他界してからは目に見えて祖母は厳しくなったそうだ。

 そして穂乃莉も、祖母がいずれこの巨大グループの跡継ぎに穂乃莉を考えていることは子供心に感じていたし、大きなプレッシャーとして常に肩にのしかかっていた。


 ――私は、そんな器じゃないんだけどな……。


 穂乃莉自身は大企業の孫娘として育ち、おっとりとしてマイペース、祖母とは正反対の性格だった。

 元々は大学卒業と同時に、久留島の本社へ入ることが決まっていたが、全く外の世界を知らずに祖母の元で働くことに抵抗を感じた穂乃莉は、何度となく祖母を説得。

 最終的には期限付きで、このグループ企業であるKRSトラベルへの入社を許可してもらったのだ。


 ――その期限が、あと三ヶ月……。


 当初は二年間という約束だったが、仕事をするうちにのめり込み、後二年、後一年……と期間延長させてもらった。
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