清くて正しい社内恋愛のすすめ
 しばらくして、穂乃莉は耐え切れずに上目遣いで加賀見を見上げた。

「……連絡もくれないし」

「え?」

「加賀見は、さぞお休みを満喫してたんでしょうね。あけましておめでとうのメールすら寄こさないし。まぁ、契約恋愛だし、期待もしてないですけど」

 そこまで一気にまくし立てて、穂乃莉はぷいと顔を背ける。


 まさか自分がこんなにも(ひが)みっぽいとは思ってもみなかった。

 今までの恋愛で、こんなにも嫉妬したり僻んだり、感情を左右されることなんてなかったのに。


「あぁ、そうか」

 すると加賀見が一人で納得する様な声を上げる。

「それでお前、ご機嫌斜めってわけね」

 くすりと肩を揺らした加賀見にむぎゅっと鼻先を掴まれ、穂乃莉は「きゃ」と声を上げた。


「ち、違うもん……」

 穂乃莉は飛び上がりそうになりながら、くぐもった声を出す。

「……もん?」

 加賀見はぶはっと吹き出すと、楽しそうに声を出して笑った。

「なによ……」

 穂乃莉はぷうっと口元を膨らませる。
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