清くて正しい社内恋愛のすすめ
 玲子の怒りにいち早く気がついた卓が駆け寄り、穂乃莉も含めみんな何事かと顔を上げた。

「ま、まぁまぁ玲子さん。先方の都合もあるのかも知れないですし……」

「卓は黙ってなさい! 相田くんも、なんでオーケーすんのよ。いくらなんでも急すぎるでしょう?」

 卓がなだめようとするが玲子の鼻息はおさまらず、相田と加賀見を交互に睨みつけている。


 玲子の作業は、企画書に添付するパンフレットのサンプル作りだったが、相手が“東雲”だということもあり、かなり作り込みに手間がかかるようだった。

「玲子さん、急で本当にすみません。あの……」

 穂乃莉が慌てて声を出すと、それを制止するように加賀見がゆっくりと立ち上がった。


「玲子さん。急な日程設定なのは重々承知してます。でも俺は、玲子さんの実力なら、問題ないと判断したんですが」

 加賀見はそう言いながら、チラッと相田に目線を送る。

 相田は突然振られたボールに、くすりと笑うと玲子を見つめた。

「まぁ、そう言うことだな。石崎だけじゃない。このチームなら一週間で形にできると思うよ」

 相田も同調するようにうなずき、それ以降は玲子に一言も文句を言わせなかったのだ。
< 95 / 445 >

この作品をシェア

pagetop