清くて正しい社内恋愛のすすめ
 その一件以降、国内ツアーチームは火がついたように作業に没頭した。

 穂乃莉は加賀見とプランの最終的な詳細を詰め、花音がプレゼン用の資料作成、卓は具体的なスケジュールや移動手段のシュミレーションをし、玲子がパンフレット案を作成する。

 最終的に相田のゴーサインが出たのは、出張が明日に迫る定時直前だったのだ。


 穂乃莉は、みんなで必死に頑張ったこの一週間を思い出し、ソファで再度姿勢を正すと、手元の企画書を持つ手に力を込める。

 この企画書には、みんなの血の滲むような努力と、想いが込められている。


 ――絶対にものにしたい……。


 穂乃莉がそっと顔を上げると、隣の加賀見もいつもより少し緊張した顔つきに見えた。


「加賀見でも緊張するんだ」

 穂乃莉がくすりと笑うと、加賀見が身体を寄せてコツンと頭を穂乃莉にぶつけてくる。

「ばーか」

 ソファが沈み込み、膝と膝がかすかに触れた。

「も、もう!」

 穂乃莉は顔を真っ赤にすると、わざと口を尖らせながら、照れ隠しするように窓の外に目をやった。

 全面ガラス張りのロビーの窓の外は、白い砂浜のプライベートビーチが広がっている。
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