清くて正しい社内恋愛のすすめ
「それが今までの各社とは全く違う視点のプランでして、なかなか面白いご提案だったので伺っていたところです」

「ほう」

 吉村の声に支配人は小さく眉を上げると、チラッと穂乃莉の顔を見た。

 さっきから何度となく、支配人の視線を感じる。

 穂乃莉は若干の違和感を覚えつつ、支配人の次の言葉を待った。


「そうですか。吉村君がそう言うのなら、ぜひ私も話を聞いてみたい。ただ、あいにく今日は予定が詰まっているので……どうですかな? ディナーでも一緒に取りながら、お話を伺うというのは?」

 予想もしなかった支配人からの提案に、穂乃莉は思わず目を丸くすると、加賀見と顔を見合わせる。

「プライベートなお時間に、よろしいのでしょうか?」

「もちろんですよ。うちのシェフ自慢のコース料理を用意させましょう。お二人で午後六時に、レストランまでお越しください」

 支配人のにこやかな声に、穂乃莉が戸惑いながら加賀見を振り返ると、加賀見は小さくうなずいている。

 確かにこれは、願ってもないチャンスだ。

 今まで会うことすら叶わなかった支配人に、直接プランを説明することができるのだから。

「ぜひ、宜しくお願いいたします」

 穂乃莉は満面の笑みで答えると、深々と頭を下げた。
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