君の心をみせて
それから、自分の感情が出せなくなった。

自分がうれしいのか、悲しいのか、わからない。


それから十数年、その生活にも慣れた。

怪しまれないように実際に発されたことだけに反応して、人の心を見て学んだ表情を作って。

うっかり心の中だけのことに反応してしまった時は「何となく〜」とか言ってごまかしたり。

苦戦した中学までとは違い、高校では友達もできて、そこそこな毎日を送っている。

それでも、人と関わるためにわからない感情を取り繕って面白くないことに笑う毎日に、自分は何をやっているのだろうとも思う。

結良(ゆら)!ほらぼんやりしてないで、移動だよ!」

「あぁ、ごめんごめん今行く!」

表面だけの苦笑いを浮かべて駆け寄る。
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