君の心をみせて
私は慌てて『大丈夫!』と返す。

私への吹き出しをしばらく見つめていた。


週末、久しぶりに朝からメイクをして髪を緩く巻いた。

鏡に映る自分の口角が上がっていることに気が付いてじっと見る。

見れば見るほどいつもの顔に戻っていったが私はしばらく鏡を見たままだった。

いつもより少しおしゃれな私服に袖を通して私は待ち合わせの駅前に向かった。

待ち合わせ場所にはまだ誰もいなくて私はスマホを見ながら待つ。

「あ、高宮?」

呼ばれて顔を上げると枝野が立っていた。

少し遠く、間を人が通ったら見えないくらいの距離。

医っとそんなに張っていないはずの枝野の声は私の耳にすんなり届いた。

人ごみの中で彼だけが私に向かって歩いてくる。
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