君の心をみせて
「覚えとく」

そう答えると福原は私に向けていた顔を正面に戻した。

今レーンでは礼奈が投げている。

「あのさ、礼奈のこと好きなの?」

今度は私が、さっきの福原みたいに囁いた。

私が言い終わる前にものすごい勢いで私の方に顔を向けた。

「ちょ、え、なんで」

「なんとなく?さっきからちょいちょい礼奈のこと見てるし、好きなのかなって…」

「あー!ストップストップ」

福原は私の口を掌で押さえた。

「ん?」

そのまま、目だけ福原を見る。

福原は薄暗いボウリング場でもわかるくらい赤くなっている。

〔あぶな、聞かれてないよな。ばれたら終わる〕

20秒くらいか、目があったまま静止する。
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