君の心をみせて
「ありがとう」

いつもは見ないような柔らかい笑顔で私に言った。

「高宮は優しいね」

〔啓斗の言ったとおりだ〕

言われたことも、心の声も言われ慣れてなくて顔をそむけてしまう。

横でくすくす笑う声がする。

「もう…」

頭に温かい手が乗った。

そのまま優しくなでられる。

「やべ、啓斗に怒られるわ」

福原は立ち上がって、私は見上げる。

「ありがと」

三度目のありがとうは、前に進んでいる気がした。

そしてドリンクゾーンに消えていった。


お昼ご飯を食べたら今日はお開きになった。

幼馴染の三人は当たり前だが同じ最寄り駅。

希海と望由は同じ方向の電車で、私は一人だった。
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