君の心をみせて
何とか間に合った理科室でぼんやり授業を受ける。

「じゃあ隣の人と話し合ってみてください」

先生の指示と共に教室が騒がしくなる。

私の隣は枝野啓斗(えだのけいと)という男子。

席替えしたばかりで話したことがないからどう話しかけようか脳内シュミレーションする。

ちらっと枝野の方を見た時、枝野の心が見えた。

〔高宮の心は面白い〕

…私の…心?

私の脳内は一気にショートしてとりあえず顔を正面に戻す。

気にしてみると、枝野がこっちを見ているのが感じられる。

私は思いつくただ一つの可能性を考えた。

もう一度ゆっくり、今度は様子を伺うように顔を枝野に向けた。

枝野はこっちを見ながらただ微笑んでいる。

相変わらず心は〔面白い〕のまま。
< 5 / 91 >

この作品をシェア

pagetop