君の心をみせて
一緒に帰りたいのはやまやまだが、今日は福原と約束があった。

「あー、えっと」

そう言いつつ、私は福原の方に視線を送った。

その時、ちょうどこっちを見ていたのかすぐに目が合って、笑顔で首を振られた。

私は目線を啓斗に戻す。

「うん、帰ろ!」

「あ、うん」

啓斗はなぜか無表情で私がさっき見ていた方を見ていた。 

〔彰…?〕

「ん、どうした?」

「いや、何でもない」

啓斗すぐに笑顔に戻って私を見る。

「結良と帰るの久しぶり、嬉しい」

「私も」

ん、と言って差し出された手にそっと私の右手を重ねる。

乗せられた私の手を温もりが包んだ。
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