君の心をみせて
「どっか寄って帰る?」

学校の校門を過ぎても道は同じ制服の人でごった返している。

「…」

ぼそっと隣から何か聞こえた。

「ん?何て言った?」

隣を見ると照れた顔の啓斗。

「だ、から、」

突然繋いだ右手を引かれて、啓斗との距離が急に0になる。

「俺ん家くる?」

耳元で囁くように言った声は吐息と共に私の耳をくすぐった。

私は空いた左手で右耳を押さえながら啓斗の顔を見る。

さっきまで照れた顔だったはずの彼はいたずらっ子のように笑っている。

「結良、照れてる。顔真っ赤だよ」

〔結良、かわいい〕

「ちょっと、からかってるでしょ!」

啓斗は私が心を見られることをわかっててやっている。

それは表情からバレバレ。
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