君の心をみせて
啓斗の頬に顔を寄せる。

その瞬間、唇に軽く当たる感触があった。

私がかかとを下すとともに啓斗が頬をおさえた。

そのまま目だけ私を見る啓斗は見たことないくらい真っ赤だ。

〔今…結良が…〕

「じゃあ、また」

私は再び歩き出した。

今度は振り返らなかった。

そっと人差し指を唇に当てる。

初めて触れた啓斗のぬくもりがまだほのかに残っていた。
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