君の心をみせて
「だから、今、幸せ」

最後だけ、啓斗は声にした。

不意に耳に入ってきた言葉はストレートに私の心に届いた。

「…私も」

私がそう言うと同時に啓斗が身を乗り出す。

優しいキスだった。

「この前の仕返し」

啓斗はにやっと笑って言う。

「照れてる結良も可愛い」

「ちょっと」

そんなこと言うと、さらに恥ずかしくなるじゃん。

「結良、好きだよ」

幸せに顔をほころばせる。

「周りを気遣う結良も、不安になっちゃう結良も、素直な結良も、全部好き」

窓から差す夕陽が私と啓斗を同じ色に染めた。
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