添い寝だけのはずでしたが
そういう顔で見ていたのか、葵さまは私を見るなりフッと目を細めた。


「聞きたいって、そのことか。何かお前の様子が変だと思った。妬いてる?」


ぶわっと、顔が一気に熱くなる。


「そ、そんなんじゃ……」


「ちょっとふたりで話そうか」


 腕を取られて、強引に連れて行かれる。


 今度はカフェテラスの入口から出て、ショップやロビーなどがある方の通路に出た。


 そこにはたくさんの生徒が歩いていて、とてもじゃないけどゆっくり話せるような雰囲気ではない。


「ここだと誰かに聞かれちゃう」


「別に聞かれてもいい」


 そう……なの?


 それって何もやましいことはないっていう証拠だよね。


「ちょっと耳貸せよ」


 そう言って、顔をぐっと寄せてくる。


 ドキッ。


「間違っても中川エマにこんなことしないし……」
 

耳元に葵さまの息が微かにかかる。


 うっ……わあ!


次の言葉を待っていると、葵さまが私の耳にハラリと落ちてきた髪を指でそっとすくう。


「こんなこともしない」


うわあ……。


ドキドキするから、本当にやめて欲しい……。



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