添い寝だけのはずでしたが
「そ、それが……な、何?」


 心拍数が上がり続けていて、もうどうすればいいか分からない。


「俺がこういうことしたいって思うのは、お前だけ」
 

え、どういうこと……?


「葵……さ、ま?」


 なんだか耐え切れなくて、ギュっと目を瞑る。


「反応がいちいちかわいくて、やばいだろ」


 壁に肩肘をついて、さらに私との距離を縮めてくる。


 かわいい……それって、私のこと!?


「昨日は、俺の部屋のやつが中川エマを呼び出して、
俺はたまたまあの場に居合わせただけ」


「そうなの? 廊下で葵さまに告白してたって聞いた……」


「そんなのあいつから散々聞かされてるし、俺は何度も断ってる。それに、あんな人工天然女に一ミリも興味ない」


 じっ、人工天然女!!


 確かに、ちょっと作り込まれた感はあるけど……。


「部屋の中には他のやつもいたし、やましいことは何もない。これでいいか?」


「うん……」


葵さまが言うならそうなんだよね、それを聞いてすごくホッとしてる。


これだと本当にただ嫉妬している彼女だよ。


人の噂ってこんなものだよね。


断片的に見聞きしたことから話を膨らませて、あらぬ疑いをかける。


本人の口から聞くまで葵さまを信じていれば良かった。


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