添い寝だけのはずでしたが
今日出会ったばかりの男の人と、同じベッドで寝るなんて……ちょっと怖い。


さすがに何もされないよね……?


考えが浅い?


おいしい話には裏がある、そういうことも覚悟の上で引き受けるべきだったのかな。


不安で情けない気持ちでいっぱいになっていると、葵さまがフイと顔を背けた。


「なんか勘違いしてるみたいだけど、色気のない女に興味はない」


よ……良かった……。


言われた内容はともかく、これで余計な心配事は減ったよね。


ここは仕事と割り切って、なんとかやるしかない。


「どうせ金目当てだろ? 寝てる間に俺をどうにかしようとか考えるなよ」


「それには及びません。葵さまにぐっすりお眠りいただけるよう、私は自分の任務を全うするだけです」


「真面目かよ」


もう後には引けないし、開き直るしかない。


凛とした態度で接すると、葵さまはもう何も言ってこなくなった。


「それでは添い寝、致します!」


ベッドに上がり、壁に近い方に寝転ぶ。


その時、葵さまが吹き出したような気がした。


だけどこっちを見ているわけではなく、目線は手にしているスマホの方を向いている。


私には関心なし……と。


まあ、徐々に信頼関係を結べればいいよね。


そう思うものの、添い寝しますと言っておきながらこれからどうすればいいのか分からず、壁の方を向いたままでいた。


少しすると、背中側の少し離れたところからベッドの軋む音が聞こえる。


葵さま……?



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