添い寝だけのはずでしたが
「それは、葵さまが寝付く前にということですか?」


「ああ。こんな治療法、ありえないだろ」


そのために雇われたのに、葵さまが眠る前に部屋を出て行くのは気が引ける。


「そんなことをしたら……解雇されてしまいます」


「知るかよ」


言い方はキツイけど、突然添い寝係を用意されて困っているのは、葵さまも同じかもしれない。


それにしても今日は……色々あって疲れちゃった。


明日は早速、添い寝係について、美沙さんにご教授願おう。


そんなことを考えながらしばらく横になっていると、だんだん瞼が重くなってきた。


眠っちゃダメ、早く部屋を出ていかないと。


そう思うのに体がいうことをきかない。


だってベッドがふかふか過ぎる。真新しいシーツの匂いが心地良くて、高い天井を見上げれば広くて真っ白で、まるで夢の空間にいるみたい……。


気付けば夢の中にいたようで、物音で目を覚ますと窓の外はもう明るかった。



いつの間にか体に布団が掛けられていて、慌てて体を起こして辺りを見回すけど、葵さまの姿はどこにもない。


私が居座るから、葵さまの方から出て行った?


時計を見ると、6時を少し過ぎたところだった。


急いで部屋を出ると、廊下に葵さまが立っていた。


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